天王寺区の1年間無報酬デザイナー募集ひどいんちゃうんの件、つづき。

お金、払わない。

お金、払わない。

昨日も書きました、天王寺区の無報酬デザイナー募集の件。(昨日の記事はこちら

周りでもいろいろと話題になっているみたいなので、まとめつつ意見を再度述べてみようとおもいます。

署名の募集も

ウェブ署名の募集がはじまったみたいです。署名するかどうかは別として、いろんな人の意見が寄せられています。腹を立てている人が多いのが伺えます。

「天王寺区広報デザイナー」無償の募集について: デザイン料の無償を撤回

「無報酬のかわりに名前を出す」→それ危険じゃない?!

「無報酬のかわりに名前を売ってあげるから」ということらしいですが、名前出したら「この人、無料で引き受けてくれるんや」ってことにもなりかねないですよね、単純に…。

区の想定としては行政の実績をもとに仕事を得られれば、ということなのかもしれないけど、せっかく無料で一年間我慢したのに、その後も無料と格安のオファーばっかり来て…なんてことになったら、なんか保障をしてあげるのだろうか。

これは「新しいチャレンジ」じゃないと思うよ。

逆に賛同意見として、「せっかく行政が新しいチャレンジをしているのに、文句を言うな」という向きもあるみたいです。

これ、けっしてチャレンジじゃないと思うよ。世間で「チャンスを与える」という大義名分のもとに無料コンテストとか格安発注が横行しているのを、絶対横目で見てると思います。「ああいうことを民間がやっているのだから、我々も無料で大丈夫だろう」という安易な考えが私には透けて見えるのですが、いかがでしょうか。

だから余計ひどいように思えるんです。

そもそもの元ネタが迷惑な問題をいっぱいはらんでいるのに、それを行政がマネしようというのなら、傷口に塩じゃないの。

発表の機会?

Facebookで天王寺区長のアカウントを覗いてみましたら、この件のスレッドが立っていました。読んでみたら少しは考えが変わるかなと思ったけど、やっぱり全然なっとくいかなかった。

大学や専門学校でデザインを学んでおられる方や副業的にデザインをされている方などアマチュアのデザイナーの方々の中には優れたセンスを持ちながらも発表の機会を十分に得るに至ってない方も多くおられます

と書かれていて、そういう人に門戸を開く意味で無料にした、ということのようですが、そういう人がデザイナーとして日の目をみられないのは当たり前なんですよね。厳しいかもしれないけど。

(※今回のは、アーティストの話じゃないことに注意)

本当にやる気のあるデザイン科の学生、あるいはデザイナー志望の若者っていうのは、格安のバイトでもいいから仕事を探そうとします。私もそうでした。バイト先のお客さんだったフリーランスのデザイナーに頼み込んで、なんとか仕事をさせてもらったものでした。

バイトでもいいから、お金をもらって仕事ができるようになってはじめて「デザイナー」、業界人の端くれなのです。デザイン系の学校に通っていると、先生にそれはそれは口酸っぱく言われます。デザイナーに必要な能力は、作品を作るだけじゃない。営業力とか、精神力や体力が必要なんだよって。そこらへんの、制作以外の能力を行使できない人が「日の目を見たくて発表の機会を待っている」しかなくなるのです。発表て。

奨学金のようにやる気のある学生”デザイナー”を応援したいのならわずかでもいいから有償にしなければ意味がありません。いっぽう、作品作りにしか興味のない人は「アーティスト」ですから、デザインの仕事をやらせるのはお門違いです。と、このように、いろいろと矛盾があるのです。

「優秀な若手を応援するつもりだ」といいながら、実際はなんだかいびつな形になってしまっています。

座談会動画

この話題についての座談会みたいな動画を見つけたので紹介。

デザイナーとアーティストの違いにまで言及しているのはちょっと話飛び過ぎてる感じがするかもしれないけど、そこをとりちがえているのも原因のひとつじゃないかなと思うのです。

「デザインの力を取り入れたい」のには賛同する、けど。

この募集は「これからはデザインの力を行政にも取り入れていきたい」という意向から始まったことのようで、その点に関しては賛同しますし、そこに気づいたことは基本的にはとてもいいこと。

ただ、あまりにもデザイナーという職業に対して無理解すぎるから、私たちが腹を立てるのです。その力を借りようというのなら、それなりの筋を立ててもらわないと。

今回の募集は「デザインの力で、行政を変える!!」と銘打たれていますが、それほどの力を持ったデザインなど無料で引き受けちゃうような人にはどう考えても荷が重すぎるし、逆に、素人のデザインでもじゅうぶん行政を変えられると思っているとしたら、それはプロが持っているデザインの力を認めていないことになります。ここも、なんか矛盾しています。

 

昨日も書いたけど、クリエイターとはすべからく「名前が出て自己顕示欲が満たされれば腹膨るる」人種だと、まだまだ世間の多くの人が思っているのです。問題はもうすぐ収束するのかもしれませんが、私たちだってきちんと仕事して稼いで生きていきたいんだってことを伝えたく、この記事を残しておきます。

 

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