コワーキングスペースに3年間くらい通ったけど辞めたフリーランスの話:メリットとデメリット

改訂

「新しい働き方」として注目を集めるコワーキングスペース。
出会いがある、アイデアが生まれるなど、フリーランスにとって理想的な環境のように語られているが、本当のところはどうなのか。

私は去年、3年半くらい契約していた大阪のコワーキングスペースを辞めました。コワーキングスペースについて、メリットはとても声高に宣伝されている印象だけれども、では実際に利用してきた私の目にはどのように映ったのか。体験したこと・感じたことをバカ正直に書いた記事をお送りします。

断るまでもないことですが、すべては私の主観です。思い返せばいろいろと失敗もしてます。だから正直に書こうとすると、ポジティブなことだけ残すことはどうしてもできませんでした。最新サービスとうまく付き合えなかった情けない子の失恋話、とでも思って笑って読んで頂ければ幸いです。

前提としてひとつ申し上げておきたいのは、私が利用していたコワーキングスペースは、ドライに場所のみを共有するシェアオフィスではなく、本質をコミュニティに求める場所でした。そもそもコワーキングスペースとは後者のことを指すようです。

入会したときは全く誰とも知り合いでない状態で、契約のかたちは毎月いくらの利用料を払うタイプでした。多いときは週に3−4日ほど通っていましたが、仕事の都合などにより数ヶ月のブランクを挟んだこともあります。

目次

ぶっちゃけ、仕事をゲットできるの?

コワーキングスペースに行っている、と言ったらいちばんよく聞かれたことがこれです。実際、仕事のオファーはたくさん流通していました。ウェブ屋とエンジニアの仕事が中心でした。

ただ、聞こえてくるのはいずれも「誰か◯◯できる人いませんか」であって、トラブルも多いです。私がいつもしているみたいに実績を見てもらったうえでの名前付きの仕事ではないので、スキルのミスマッチや齟齬は発生しやすいみたいです。

私の場合は仕事のトラブルから日常の人間関係に亀裂が入ったこともあったので、仕事が得られること自体はメリットであってもデメリットにもなりうる、というべきでしょうか。

しかしそれでも、藁でもいいからチャンスが欲しい人にとってはいいんじゃないでしょうか。ただし、仕事を求めるためだけに行くというスタンスは歓迎されません。それが本音だとしても隠すのがマナーみたいな空気があります。

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交流が活発なの?

日常会話は、初めの数ヶ月に限ってはよく話しかけられた記憶があります。たとえばランチは10人くらいでぞろぞろと連れ立って行ったり。パーティがあったり。当たり障りない会話が中心ですが、そういうのも必要だと思えるなら、これもメリットに挙げてもいいでしょう。

ただ、1年くらい経つと話しかけられることは少なくなります。さらにブランクを挟むと、次に行ったときにはまるで知らない人を見るような目で見られました。会社や学校のような強固な連帯がないので、こんなものでしょうか。こうなる前に辞めたほうがよかったね。

ポットラックパーティに手作りのお料理を持って行くなどいちおう回復の努力はしましたが力及ばず、気づいたら常連は向こうで固まっていて私はぽつんと一人取り残されるなど結果は惨憺たるものでした。それでもほんの数人ながら、辞めてからも仲良くしてくれている友人もできました。どんな場所にでも気の合う人は必ずいるということを理解した、それが救いかな。

仕事について教え合える、というのは?

「仕事について違う専門の人に気軽に相談したり教え合ったりできる」なんていうのもよく言われることですが、確かに数回そういうこともあったけれど、メリットとして挙げるほど頻繁にも起こらないというのが正直なところです。

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コワーキングの「内輪ノリ」には無理してでも合わせろ

私の体験した限り、コワーキングスペースには内輪ノリの壁が間違いなくあります。けっこう分厚くて高い壁です。これからコワーキングスペースを利用してみたいと思っている人にはご忠告として強く申し上げたいのですが、内輪ノリには無理にでも合わせてください

「合わないノリには無理に合わせなくていいや」という考えではダメです。そういうのヤダって人は私みたいに、そのうちいづらくなります。これは宿命です。

なぜか。順を追うと、こうです。

コワーキングスペースの日常では、スタッフと常連がキャッキャと盛り上がっている場面がときどきあります。特に合わせずにいると、しばらくすると中心グループからは自然と距離を置かれるようになります。

次の段階では、だんだんとそのキャッキャが耳障りに感じるようになってきます。集中力も下がります。こう感じた時、私はコワーキングスペースからカフェに移動して仕事をするようになりました。そうするとね、ホッとするんです。集中力も取り戻します。これを何回か繰り返すとあらふしぎ、体がコワーキングスペースに行きたがらなくなります。

「カフェで仕事をするノマドは孤独だ」なんて言説が少し前に流行りましたが、逆にそれがカフェのいいところでもあるとわかりました。その場所が多少うるさくても気にならないのは周りが赤の他人だからこそであって、なまじ顔見知りだと余計に耳障りなんです。

いちおう、彼らを批判する意図ではないので擁護しておくと、人間って習性として、内輪でかたまりたいものなんです。だって、新しい人間を受け入れるのは労力がかかるし、内側にいればラクだから。この傾向は内気な人ほど強いので、IT系の人たちが主催するイベントが「内輪ノリが強すぎる」とかいってたびたび批判されるのも、仕方のないことなのです。

だから私のようにこじらせたくなければ、つねに中心人物の顔色をみて、気に入ってもらえるように、自分を殺してでも内輪に入っていくこと。そうすれば幸せなコワーキングライフが待っていることでしょう。
(え?そういうのが嫌だからフリーランスになったのにって?そら知らん)

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「自然なコラボ」というのが本当にあるの?

コワーキングスペースについての記事では、メンバー同士の交流が活発になると、そこから新しいプロダクトが自然と生まれ、それらは成長して世界へ羽ばたいてゆく……というストーリーがよく語られます。

3年いたけど、実際にその通りのものは見たことがないよ。
存在するっていうけど見ることができない、ツチノコみたい。

ツチノコに似たものはいるんですよ。新しいウェブサービスをやるからというのでデザインを手伝ったことならば、あるいはメンバーを安いギャラで使ってプロジェクトを立ち上げる、というのならありました。でもそれはただのヘビですよね、じゃなかった、ふつうの受発注ですよね。

ああいうストーリーは、よほど交流の厚い関係でないと成り立たない。でも、コワーキングスペースで厚い関係を築くのは超難しい。ツチノコはワガママなのだ!

「オープンなコミュニティ」なのか?

コワーキングスペースって言葉を聞くだけで、オープンでフリーで新しい素敵なコミュニティって勝手に思ってしまうけど、じつは誰にでも平等にウェルカムというわけではなかった。

コワーキングスペースの話というのは、仕事の話とコミュニティの問題を分けて語ることができないのが特徴的です。「あくまでも仕事をする場所なんだから、交流・出会いを求めて来るな」というご高説もご尤もだけれど、交流することで仕事の質を上げる場所って言ったのはそっちちゃうん?って思います。

思いのあるコワーキングスペースほど、オーナーの自己実現のために運営されている面もあることは忘れてはいけません。理想にそぐわない人は無視もされるし、いづらくもなります。これはもう人間のやることだから仕方ない。

結局のところ、コワーキングスペースのメリットを充分に享受したいのだったら、オーナーか中心人物と元々知り合いであることが必須条件だと思います。そうでなかったらあまり多くは望めないという、同じ料金を払っている者同士でも格差があります。

そういう意味で「オープンなコミュニティ」という宣伝文句、あれは間違いって思う。誰が行っても公平に開かれているわけではないもん。

良かったことは?

3Dプリンタを触れたのは嬉しかった!

3Dプリンタ「Cube」でプリントしてるところ

コワーキングスペースを辞めた理由

この記事を読んで「じゃあコワーキングスペースを利用しよう!」と思う人はいなさそうです。だけど、コワーキングスペースでのネガティブな体験を語ることが厳格にタブー視されているような空気には、なんかすごく反発をおぼえます。

好き勝手書いておきながら何ですが、コワーキングスペースなんか無くなっちまえなんて思っているわけではないんです。辞めるにしたって、イヤなところが見えてきてもすぐに別れを告げることはできず、しばらくは悩みました。なぜならいっときは確かに楽しかったし、希望も持っていたからです。って恋愛か。

なぜ辞めたのかといわれれば、コワーキングスペースに通うことがほんとうに自分への投資になっているのか、じっくり考えた結果です。

たしかにいくらか仕事の足しにはなるけど、ストレスを乗り越えてまで行くべき場所なんだろうか?

おもしろいプロダクトを産みたいのなら、昔からクリエイターという人種がそうしてきたように、いい企画を思いついたときに誰か適当な人を飲みに誘えば充分なんじゃないか?

他のフリーランスと「ゆるくつながる」のはそんなに必要なことなんだろうか?

自分と対話する時間を持ったり、自分を気にかけてくれる人のことをもっと大切にすることのほうが、よっぽど自分への投資になるんじゃないだろうか?仕事でもプライベートでも。

そう考えたら、私にはコワーキングスペースは必要ないな、って結論に至りました。

逆に、バーチャルオフィスは今も重宝している

コワーキングスペースの話をするとよく引き合いに出されるのが、シェアオフィスやバーチャルオフィスですね。私はじつはこの大阪のコワーキングスペースとは別に、事務所としてバーチャルオフィスを借りてました。こっちはいまだに利用してます。たぶんもうすぐ10年超えます。

本質的に機能が違うものなんで単純に比較しても意味ないんですけど、バーチャルオフィスはドライに機能だけを貸してくれる場所なので、不自由さえなければずーっと愛用できます。

人間関係とかまるで関係ないのがすごくイイんです。最近私が使っているバーチャルオフィスがコワーキングスペースの併設を始めたんですが……まあ使うことないだろな。

コワーキングスペースに興味を持っているフリーランスの方に言いたいのは、もし登記や事務所がわりの住所とか機能を求めてコワーキングスペースへ行こうとしているなら、人間関係がこじれた時に劇的に面倒くさいことになるから、だったらドライなバーチャルオフィスあるいはシェアオフィスにしておいたほうがいいよ、ということです。

何を求めているかリサーチしてからにしよう。バーチャルオフィスについて知りたい人はこの記事も読んでみて。

フリーランスがバーチャルオフィスを使うメリット – クリエイター丙

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