フリーランスは全てが自己責任、何かあってからじゃ遅いから。「フリーナンス」に登録だけでもしておきなよ
改訂
フリーランスにとって、損害賠償とかって人ごとじゃないよ。原因が不可抗力であっても仕事の責任をたった一人で負わされることだってある。「なんでも自己責任」「お金がないに陥りやすい」という、フリーランスの二大リスクから守ってくれるサービス「フリーナンス(freenance)」というのを知ったので、登録してみました。
無料で口座開設するだけで、最大5,000万円のお仕事保険がかかる。イラストレーターもデザイナーもライターもエンジニアも、登録するだけしておいて損はないよ。
目次
フリーランスは何があっても自己責任。
今年も台風が来ましたね。
被害に遭った皆様にお見舞いを。うちも去年は大きい台風と地震があって、少しですけど被害を受けました。
私はフリーランスとして生きていますが、いつも思います。もし、仕事が進まなくなったら、どうしよう。家が壊れるまでいかなくとも、電気が止まればすぐでも詰みますね。
サラリーマンの皆さんなら、台風で電車が止まったら、そんな時はもう無理して出社しなくていいよ。仕事より安全第一だよ。そんな風潮ができていて、うらやましいな。
フリーランスだとそうはいかない。クライアントから
「台風?知りません。納期は納期だから間に合わせてくれないと」
って言われても全くおかしくない。私の周りはいまのところ優しいお客様ばかりなのでそこはまあ、ですけれど、フリーランスは事業主、いち業者ですから。
そして本当に台風のせいで間に合わなくて、損害賠償請求されることだってありうる話です。それが元で莫大な借金を背負ったり、廃業せざるを得なかったり。
フリーランスならいつ誰の身に起きてもおかしくない。
支払サイトが長いと「お金がない」に陥りやすい
もうひとつ、フリーランスを苦しめる要因「お金がない」。
請求書を送ってから支払われるまでの期間を支払サイトといいます。私の場合はイラストレーターとしても仕事していますけど、出版社や編集プロダクションと取引では支払いサイトは長めの傾向でした。
依頼が来たら、フリーランスは予定を空けて全力で取り組みますね。でも、その間も経費や生活費は出て行きます。
仕事の期間+支払サイトの期間、お金は入ってきません。なので支払サイトがあまり長いと、いわゆるキャッシュフローのバランスを崩した状態、つまり「お金がない……」という状況に陥りやすい。
だからできれば、フリーランスは支払いサイトが短い企業と取引したいものです。
いちおう下請法という法律で規制があって、最長60日と決まってます。逆にいうと二ヶ月待たせるのは合法です。そして下請法は小さい企業には適用されないので、相手によっては何ヶ月待たされても、フリーランスは文句が言えないのです。
フリーランスってほんっと弱い立場です
自分で望んで独立したんだからどんなリスクも負って当然じゃん?みたいなことを平気でいう人多いんだけど、それかなりおかしなこと言ってるのわかってますか。
サラリーマンと同等またはそれ以上の能力を持ってて真っ当に仕事している同じ人間なのに、独立を選んだってだけの理由で全く守られないなんて、むしろ理不尽以外の何物でもないんだけど?
ひとつのつまずきもしない、不運にも一切合わない人間なんてこの世に一人もいませんのでね。サラリーマン=労働者が守られるのと同等とまではいかないまでも、フリーランスもある程度法律で守られるべきって思っています。
そのためにみんなで作っていかないかんけど、でもいまの日本はそこらへん穴だらけで、整備にはとてつもなく時間も労力もかかる。これが現状です。
無料登録するだけで仕事保険がついてくる「フリーナンス」
そんな中登場した「フリーナンス」というサービスがあります。これが、「なんでも自己責任」「お金がないに陥りやすい」という、まさにフリーランスのふたつのリスクに対応するために作られたものです。
フリーナンスとは、どんなサービス?
- フリーランスに特化したファクタリングサービス
- 登録すると、フリーランス向けの仕事保険「あんしん補償」がついてくる
ファクタリングってなんぞ?ひとことでいうと、売掛金の現金化ができるサービスです。請求したけどまだ支払われていない売掛金、帳簿の上では資産なんですけど、これをお金で買い取ってくれる金融サービスです。
ファクタリング自体はだいぶ前からあるんだけど、フリーランスに特化という形で売り出しているサービスはフリーナンスがたぶん日本で初めてです。
そして他のファクタリングサービスにはない独自の特徴が「あんしん補償」で、じつはこれがかなりインパクトがあります。
報酬の即日払いが可能に
支払サイトがすごく長くて、なかなかお金が入ってこなくてつらい……となる前に、ファクタリングを使えば解決です。
具体的にどう使うか。「フリーナンス」に登録すると、専用の口座が作られます。
請求書を発行するとき、この専用口座を入金先に指定しておきます。すると、その代金を即日で支払ってもらうことができます。これで、支払サイトの間ずーっと待っていなくてもお金が入ってくるわけです。
ちなみに、数パーセントの手数料が引かれます。これが実質の利用料みたいなもの。後日その口座に取引先から入金があり、フリーナンスはあなたに支払った代金を回収します。
専用口座に振り込まれたお金は、自分が普段使っている口座に移動すること手元で使えるようになります。この口座間移動の手数料はフリーナンスが負担してくれます。
専用口座には個人名義のほか、屋号やペンネームをつけることもできます。
フリーランス向け、仕事の保険「あんしん補償」
そして「なんでも自己責任」に対応できるのが「あんしん補償」という仕事の保険です。フリーナンスで口座開設するとついてきます。
どんな場合に保険金が支払われるかというと、フリーランスが真面目に仕事していたつもりなのに、何かの落ち度や事件事故があって、取引先等から損害賠償請求されてしまった……という場面。資料によればこのようです。
— 市の依頼で作成したゆるキャラのきぐるみの設計上のミスにより中の人が酸欠状態で病院に運ばれた。
— 発注者へ納品した成果物が第三者の盗用にあたるとされ、第三者から損害賠償請求を受けた。
— 職場が罹災し、納期に間に合わなかったため、発注者から損害賠償請求を受けた。
フリーナンス配布資料より抜粋
まさに、フリーランスのデザイナーやエンジニアなど、誰にでも起こりそうな(起こってほしくないけど)事案に対応しています。
保険金の額はカテゴリーによって最大5,000万円または最大500万円が支払われます。損害賠償請求はだいたい受注金額が限度なので、個人にしちゃ結構大きな仕事でもほとんどカバーできそうです。
このような保険が、フリーナンスで口座を開設すると無料でついてきます。だから登録だけでもしておきなよ、と私が言いたいわけですよ。
フリーナンス、取引先に知られないのか問題
そんな「フリーナンス」、フリーランスに大変ありがたいサービスなんですが、そんなおいしい話本当に大丈夫なん?と思ったのも事実なので事前にいろいろ調べてみた。
たぶんフリーランスの皆さんが気になる一番は、「フリーナンスを利用して、取引に差し支えないのか」ってところでしょう。
ぶっちゃけ、取引先に知られる可能性はある
フリーナンスを利用していることを、口座情報から知られる可能性はあります。
フリーナンス専用口座はGMOあおぞらネット銀行の口座で、口座名の末尾に独特の文字列が付きます(/GMOCN)。知っている人が見ればこれがフリーナンスの専用口座だということはすぐにわかります。
ただし、「/GMOCN」の末尾はなくすことができるようになりました。なんとなく取引先に知られるのはイヤ、というフリーランスからの要望が多かったらしい。
フリーナンスから取引先へ連絡がいくということは基本的にはないようです。
本人確認、反社チェック。フリーナンス利用は、取引先にもメリットだ
ただ、フリーナンスの利用が取引先に知られたからといって、なんか問題あるんだろうか。むしろ、隠すことばかり考えるより、取引先からの信頼を得るために積極的に使っていったほうが得かと。
- フリーナンス登録には、本人確認書類と、郵便物による住所確認が必要です。口座名に屋号をつける場合は、開業届も必要です。
- 反社チェックもされます。私たちが登録時に書いた情報は、セキュリティ会社の反社データベースへの照会が行われるそうです。
SNSで本名も出さず居所も明かさずお仕事募集中している自称フリーランスとは違いますよ!私はちゃんと居所も証明されてますよ!安心して取引してくださいね!と堂々と言えるわけです。
そしてフリーナンスの口座を持っているということは「このフリーランスの人は反社じゃありません」と言われたということです。企業も反社との取引を避けるべく最大限に気を遣う昨今、安心を与えられる一つの要素になるでしょう。
フリーナンス、こんなとき大丈夫?
さらにデメリットなどもう少し調べてみた。
もし取引先の支払いが遅れたら?
支払期日に取引先から入金がなかった場合、まずは私たちの元へ連絡がくるそうです。それでもまだ支払われないと、今度は取引先へ連絡が行き、最終的には私たちの与信スコアが下がるそうです。
ちょい理不尽ですが、そもそも信頼できる取引先と仕事しような、ってことなんでしょう。
利用料は本当に無料なのか?
即日払いを依頼すると、支払額の何パーセントかを手数料として取られます。それがフリーナンス側の利益になっていて、それで運営できるのでずっと無料の見込みだそう。
個人間の取引には適用されないので注意
フリーナンス専用口座は法人との取引にだけ使えます。「あんしん補償」も個人間での取引には適用されません。というわけで、個人からの依頼だけ受け付けているイラストレーターとかは、フリーナンスを利用するメリットは少ないでしょう。
ちなみにですけど、そもそもの話、一般個人を相手に「お仕事募集」することじたい、フリーランス名乗るなら脱却すべきです。一般個人との取引はトラブルも多いし儲けも少ないし、実績としても薄い。ちゃんと、企業からの名のある仕事の依頼を請けましょう、責任も伴いますけど。
フリーナンスに登録してみた
フリーランスの私がフリーナンスに実際に登録してみました(ややこしい)
住所は本当の居住地を記入
まずは住所、名前、電話番号などを記入していきます。住所は後で身分証明書を要求されるので、証明できる住所を書きましょう。法人なら登記があるけど、個人事業主は本物の住所しか証明できません。
事務所やバーチャルオフィスを持っている人は要チェック。
口座名を屋号にする場合、開業届が必要
フリーナンス専用口座の名義には、屋号やペンネームをつけることができます。その場合は、開業届の控えを求められます。
開業届の控え持ってない、無くしちゃった、という人は税務署に閲覧請求か再提出かします(再提出のほうが早くて便利らしいです)。
開業届そもそも出してない、という人もまず出しましょう。
開業届は代用も可能?まず連絡を
ところで私も開業届の控えを無くしちゃったクチです。というか、あったところで当時とは住所も姓も変わっちゃっているので、多分受理されません。
残っていたのは、結婚して越してきたときに税務署で書いた、納税地変更届の控えでした。そこでフリーナンス事務局へ問い合わせてみたところ、それでもOKという返答を得て、それを提出しました。イレギュラー対応かもしれないので、該当の人はまずは問い合わせてみてください。
ポイントは屋号や住所が書いてあって、税務署の受理印が押されていることだろうかなと思います。
審査を経て開設完了
フォームの記入が全部終わったら、数日後ハガキが送られてきます。たしか2,3日でした。あれもうきたの?って感じでした。
この中にコードが書いてあります。指定のところへ入力すると口座がアクティベーションされて、これで開設完了です。
開設したあとは
与信スコアを上げる
SNSやMoneytreeなどのアカウントと連携したり、公共料金の領収証をアップロードしたりすると与信スコアがちょっと上がります。
与信スコアを上げる行動には、電話インタビューを受けることもあります。
フリーナンスの電話インタビューとはこんなもの
電話がかかってくる日時はあらかじめ指定しておけます。電話インタビューでは生年月日、仕事内容、フリーランスになった経緯、クラウドソーシングサイトや会計サービス利用の有無、金額の決め方などを聞かれました。
インタビューっても、フリーランスの実態に迫るみたいなことではなくって、淡々としたものです。その情報をもとに与信の審査をするということ。
即日払いしなくても、振込専用口座へ
あとは、今後の仕事で請求書を発行するときに、開設したフリーナンス専用口座の情報を載せてそこへ振り込んでもらうようにします。即日払いを使わなくても、それで与信スコアがアップしたりメリットがあるようです。
とりあえず試してみたのはここまで。実際利用してみたら追記していくつもり。
本当に無料だった
口座の開設はかんたんだし本当に保険料の請求もない。即日払いを使うかどうかは別にして、フリーランスの人はぜひ登録してみてほしいです。
ぶっちゃけた話、「あんしん補償」は使う日がこないほうがいいけど、誰もフリーランスを守ってくれないこの国で、頼れそうなものはひとつでも使ったほうがいいと思う。
何かあってからでは遅いから、いまのうちにぜひ。