フリーランスの名刺の作り方、10の悩みどころ
友人のフリーランスのライター、Jちゃんに捧げる記事。このまえランチしたとき「名刺を作らなきゃ……」と言っていましたね。
名刺の作り方に公式の決まりはないものです。私も自分の名刺の作り方には試行錯誤したこともありますし、また他のフリーランスの方から名刺を渡される立場になって、さまざまに思うこともあります。そこで名刺に関するいろんな悩みどころについて、私なりの見解を挙げてみました。
名刺なんて小さな紙切れのくせに、きちんと考えていくと、フリーランスとしての商売のやり方や根本的な仕事のスタイルにも関わる、深い話になってくるものですね。書いててそう思いました。
もくじ
フリーランスの名刺にどんな情報を載せるかについて
- 個人でも住所は番地まで載せる。
- 名刺に電話番号は必須?
- 私が名刺を2種類用意した理由
- 名刺に無料メールアドレス、無料URLはNGか
- 名刺に顔写真や似顔絵を載せることについて
- 名刺の裏面に仕事紹介を載せるのはどうなのか
フリーランスの名刺のデザインについて
フリーランスの名刺にどんな情報を載せるかについて
1. 個人でも住所は番地まで載せる。
自宅を事務所として仕事をしている人は、住所をどう記載したらいいか。番地は省いて町名までにしてもいいのでしょうか。
いいえ。住所は番地まできっちり載せる必要があると私は思います。
まず、単純に郵便物が届かなければ困るというのがひとつ。それから、私はどこの誰ですよ、と情報を明らかにするからどうか信頼してほしいという意味が名刺にはあるはず。ならば、番地まで書くのがお作法といえます。
住所を省略した名刺をもらったこともありますが、「どこの誰とははっきり名乗りませんが仕事を寄越しなサイ」なんて言われているようで、なんだかあまりいい気はしないものです。遊び用の名刺ならべつにいいのですが。
自宅の住所を載せるのがイヤだ、という気持ちはわかるのですが、だったら事務所を用意すればいいじゃないって話ですよね。お金が無いなら無いで、バーチャルオフィスを使うとか、あとはコワーキングスペースでもその住所を使う契約ができるところもあったと思います。
2. 名刺に電話番号は必須?
電話番号ももちろん、名刺に載せるべき情報のひとつです。ただ、住所に比べればもう少し迷いどころがありましょうか。携帯電話だと、居所を保証する意味はなくなりますしね。
事務所の住所と同じく、仕事専用の固定電話を持つというのが良いのでしょうか。私が使っていたインターネットプロバイダーで固定電話を申し込むと、市外局番付きで一見ネット電話とはわからない番号をもらえたので、以前はそれを仕事用の電話として使っていました。
が、引越したら使えなくなりました。固定電話と携帯電話、どっちが信頼度が高いと言えるんでしょうね。以来私は、名刺には携帯電話の番号を載せるようになりました。こっちは、引越しても契約会社を変えても長く使えますからね。
ちなみにうちはFAX番号も名刺に載せていますが、年に1回くらいしか使わなくなったので、もうそろそろいいかな……と思っています。
3. 私が名刺を2種類用意した理由
電話番号に関連して、私は名刺を2種類用意しています。片方は住所と電話番号、メールアドレスが入った「本名刺」。もうひとつの「サブ名刺」には電話番号を入れず、メールアドレスも普段の仕事窓口とは別のものを記載しています。
2種類目の名刺を作ったきっかけはクリエイターEXPOという商談会への出展でした。商談会ではどうしても不特定多数の人に名刺を渡す必要に迫られます。商談が成り立つ相手にはもちろん通常どおり「本名刺」を渡すのですが、一般来場者にまで電話番号をばらまくのは気が引けます。そこで「サブ名刺」を作っておけば、気がねなくどんどん名刺交換ができるというわけです。
席を外すときのために名刺を自由に取れる状態にもしたいという用途にも、サブ名刺が便利です。自分は一切名乗らずに勝手に名刺だけ取ってっちゃう人もいっぱいいます。ちなみに、サブ名刺に書いたメールアドレスには、のちほど謎の営業メールがわんさか届きました……。ま、そういうことです。分けておいてよかった〜。
商談会のために作ったサブ名刺ですが、日常でもあまり望まない人から名刺交換を求められる場面というのはあるもので、そんな時にも便利です。名刺入れに2種類入れておいて、さりげなくサブ名刺を出すようにすれば失礼な感じもしません。
電話番号が入っていない名刺は明らかに情報量が少ないわけなので、すかすかな印象を残さないように、デザイン上の工夫を少ししたほうがいいかもしれません。
4. 名刺に無料メールアドレス、無料URLはNGか
gmailやyahooなど無料で取得できるメールアドレスや、プロモーションサイトのURLとしてSNSの公開ページやインターネットプロバイダー支給の公開スペースを名刺に載せるのはどうなのか、という話です。
NGである(断言)、というのが私の以前からの立場です。フリーランスでも独自ドメイン名を持っていて当然と思っています。その理由は
「URLが長ったらしくなる」
というのがひとつ、もうひとつは
「自社の看板を他社からの借り物で済ませてるなんてどうかしてるぜ」
と思うからです。
フリーランスでも独自ドメインにすべき理由その1:
「URLが長ったらしくなる」とは、インターネットプロバイダー支給のホームページスペースなどを使っていると起こりがちなあれです。とくに最近見た中でひどかったのは、携帯のメールアドレスの感覚なのか、ユーザー名をやたらに複雑にしてあるもの。こんな具合に。
皆忙しいんです。そんな長いアドレスを、誰がわざわざ手入力すると思ってんねんやろ?それとも「いくら長くてもちゃんと入力して見てくれるはず、なぜなら私は特別なクリエイターだから」とでも思てはるんやろか?
URLが長いこと自体が悲しいのじゃなくて、相手の立場で考えるという視点が欠落していることが悲しい。わたしのウェブサイトを見て!と願うのだったら、URLは短い方が正解に決まってます。せめてURL短縮サービスで短くしたやつを載せましょうか。でも根本的に、やっぱり独自ドメインです。その理由が次です。
フリーランスでも独自ドメインにすべき理由その2:
「自社の看板を他社からの借り物で済ませてるなんてどうかしてるぜ」
については以前にも書きました。フリーランスだって独立した事業者なんだから、自分の看板を自前で持てるのなら持って当然じゃない?という話です。
メールアドレスやURLって、お客様とのコミュニケーションの窓口として末長く使っていくものです。世の中の企業はみな一様に独自ドメインを持っていますね。社章やロゴタイプと同じように、大事な看板のひとつってことです。
その看板が他社からの借り物って、よく考えたら気持ち悪いと思いませんか?別に私の事業はgoogleやyahooやfacebookの支配下に置かれているわけではないのに、他社の看板を自分の名刺に載っけてあげなきゃいけない理由なんかある?と思ったので、私は開業時から独自ドメインを使っています。
gmailやFacebookページを使うな、と言っているのではありません。日常や別の用途でそれらを使うのだとしても、独自ドメインは必要って思います。
でも安いやつでじゅうぶんです
これが月に何十万円もかかるようなことだったら、私も「借り物でいいよね」って言うと思います。だけど実際は、レンタルサーバーとドメイン権合わせて年間4-5000円くらいにしかなりません。しかも広告宣伝費で経費にできます。出し渋るような額じゃないんです。
安くて初心者向けで有名なロリポップ、ムームードメインがそのくらいの値段ですが、それでじゅうぶんこと足ります。
5. 名刺に顔写真や似顔絵を載せることについて
名刺に顔写真を載せておくと、別れた後も覚えてもらいやすいから良いそうです。現に、写真入り名刺制作のサービスはネットで検索するといっぱい出てきます。ただ、自分ではやりたいとは思いません。
理由はいくつかあって、自分の顔写真をやたらと人に渡してしまったら、何か悪意を持って利用されるようなことがないとも限りませんし、顔を覚えてもらったからといって仕事に結びつくものでもない気がするからです。
似顔絵はさらにもうちょっと微妙な感じがします。写真では恥ずかしいから似顔絵にしてみました感が滲み出ていたりすると、もらったとき心の奥底でトホホとなってしまい、個人的にあまり良く思えないのです。顔売る目的なのだったら写真にすればいいのに。それでもメリットがあるという人もいるのですから、やりたければお好みでどうぞと申し上げておきましょう。
私の場合は、自分の描いたイラストをあしらっています。いわば私の「看板商品」なので、いちばん手っ取り早く伝わるのかなと思い、そうしています。
猫のイラストを名刺に入れたらこうなった
そんな中、数年前からは猫のイラストを選ぶようにしました。これは猫好き特有の習性「猫の写真やイラストがついた物は包装紙や雑誌ですら捨てづらい」を利用したもので、捨てられにくくする作戦です(猫好きにしか効かない作戦ですが猫好きとつながれたら嬉しいからそれでいい)。
ただ、最近結婚して苗字が変わり、作り替えに伴って大好きな猫の絵のついた名刺を自分自身で捨てなければならず、ちょっとつらかったです。微妙に諸刃の剣……ぐぬぬぬぬ。
同じように、自分のいい顔した写真入り名刺を退職などで大量に捨てなければならない人もいるんじゃないかと思うと、ちょっと同情してしまいます。
6. 名刺の裏面に仕事紹介を載せるのはどうなのか
これは会話のタネになることが多い、という実感があります。お互いが初対面である名刺交換の場面で、会話のきっかけを探すように思わず裏面を見るしぐさをする方は多いです。
特に会話のきっかけになりやすいのが意外にも、たった一文だけ書いた個人的な趣味と特技の紹介文です。経歴や仕事のスキルというのは誰しも似たり寄ったりな面があるので、人柄が出るような部分が興味をひくのでしょうか。
ただ、詰め込みすぎはよろしくない。私もちょっと凝りすぎて「フリーランスの人の名刺って情報量多いよね(嘲」って言われたことがあります。あまりやりすぎないほうが感じが良いでしょう。目立つ経歴、エッセンスだけ。
フリーランスの名刺のデザインについて
7. 変わった形の名刺はやめよう
「たくさん名刺が集まった中にあると、目立つから」
という理由で変わった形の名刺を作る人がいますが、これはできればやめたほうがいい。なぜなら、同じ理由の裏を返せば「目立ってジャマだから、捨てよう」ということにもなるからです。
仕事で知り合った人の名刺を整理するのに専用のファイルやホルダーを用いる人は多いと思いますが、これに入らないサイズの名刺は致命的です。真っ先に捨てられこと請け合いです。
凝りたいのなら大きさで凝るのではなく、紙の材質で凝るほうが良い。形で凝りたいのなら、せめて大枠の形状は定型の名刺サイズで、一部分だけ切り抜いてあるようなものであれば問題ないのではないでしょうか。
8. 二つ折りの名刺より「情報カード」「プチポートフォリオ」にしたら?
二つ折りの名刺もちょっと微妙です。意外と厚みが高く、ホルダーに入らなかったりします。
名刺を二つ折りにする目的は情報量を増やすことでしょうが、それだったら、一般的な形のメイン名刺のほかに、もう少し情報量の多い「情報カード」的な位置づけの二つ折り名刺を作り、興味のありそうな人にだけ別に渡したほうがいいんじゃないかなと思います。
紙を薄くすれば二つ折りどころか、縦に蛇腹に折って四つ折りくらいまではできますよ。私はその作り方で「プチポートフォリオ」を作っていたこともあります。気がねなく持ち帰ってもらえるので好評でした。
9. 名刺のデザインをウェブサイトとおそろいにする
名刺のデザインを考えるうえでのヒント。私は「プロモーション用ウェブサイトとお揃いにする」という手をよく使っていたことがあります。
私は以前、ウェブ広告の制作を手掛けていたことがあるのですが、バナー広告とランディングページのデザインをある程度共通させるほうが成約率がいいという常識があり、その考え方を取り入れたものです。
名刺に「もっと私の仕事のことを知りたければ、ウェブサイトを見てください」と書いて誘導した場合に、名刺とウェブサイトのデザインが全く違う見た目であったら、見ているほうは無意識に違和感を覚えるでしょうね。バナー広告みたいにデザインの違いによる成約率までは計測できませんが、違和感は取り除いたほうがいいはず。
ただし、プロモーションサイトをきちんと作りこんであることが前提ではあります。
10. 名刺にどのくらいコストをかけますか?
名刺の印刷、どのくらいの厚みの紙を使うか
名刺にどのくらいのお金をかけるのか。それがいちばん現れやすいのは、紙の選択でしょうか。
そこそこ厚みのある名刺のほうがきちんとした印象を残しやすいのは確かです。かといって無尽蔵に厚くすれば良いってものでもありません。厚すぎれば名刺入れに入る枚数も少なくなり、値段も高くなります。
私がいま名刺に使っている紙は、坪量で200kgくらいです。サブ名刺のほうは180kg。いつも使っている印刷屋・グラフィックで名刺を印刷する場合、オンデマンド印刷でこの用紙だとたしか100枚で2500円くらいでした。これに決めた明確な理由は特にありませんが、値段と質のバランスでこのあたりがちょうど良いかな、といったところです。
市販のインクジェットプリンタ用の用紙はどうでしょうか。正確には印刷屋の紙とは比べられませんが、見た感じ135kgくらいでしょうか。200kgに比べたら、だいぶぺらぺらな印象です。
名刺の必要性がそんなに高くなく、体裁として出さなきゃいけない時もあるのでまぁ持っておこうか、くらいの用途ならぺらっとしたインクジェット紙でもじゅうぶんだと思うのですが、本気で仕事をやっていこうとするフリーランサーの名刺としてはナシだろうというのが個人的な見解です。
不要なコストかけすぎは仕事を遠ざける
そして、時間や手間という意味でのコストについて。名刺のアップデートをまめにするとか、考える時間を取るという意味でのコストは惜しむべきでなく、じゅうぶんにかけて良いものだと思います。
ところがいちど、あさっての方向にコストをかけすぎた名刺をもらったことがあります。全手作りの名刺です。全面に細かく絵が描かれていて、複雑な形をしていました。ひとつひとつ手で切り抜いたそうです。そこは100名以上の集まるまあまあ大きな交流会でしたが、その日のためにいったい何枚作ったのでしょうか。とてもじゃないけどその人に仕事を任せたいとは思えませんでしたね。時間の感覚があまりにも自分とかけ離れていそうで……。
名刺は正直なところ、そのうち整理され捨てられるものです。そんな中インパクトを残そうとして考えられたことなんでしょうけれど、奇をてらいすぎるとよくない面が強調されてしまいます。
結局はふつうがいちばん、ということなのでしょう。ふつうの範囲内でどう個性を出していくか、そして読みやすさや保管性など相手の立場に立って考えられているか、というのがデザインの手間という意味でのコストのかけ方として名刺にはふさわしいように思います。
名刺は小さいからこそむずかしい
情報が伝わればそれでいいじゃん、って思っているのだったらコピー用紙にメールアドレスでも書いて渡せば済む話なんですよね。でも名刺ってそうじゃないから、みんないろいろ悩むんだと思います。
よかったらまた相談にのりますよ。ほいじゃ。