制作系フリーランスで肩書きがたったひとつって人のほうが珍しいんじゃないか問題
この前デザイナーのY氏とランチをしていた時にいまさら気づいたんだけど、
肩書きをたったひとつしか持たないクリエイターって、じつはほとんどいないんじゃない?
例えばデザイナーだったらグラフィックデザイナーとかウェブデザイナーとかいろんな分類があるわけだけれども、じゃあ紙もののデザインしかしない!ウェブは一切触らない!ってデザイナーがいるのかって言われると、そういえば私の周りにはいないなあ。
会社員デザイナーで担当上、冊子のデザインだけを毎日やってるって人なら知っているけど、その人だってたまに会社が受注すればウェブサイトのデザインをするし、はたまた取材に行ってることもある。ウェブなんてない時代からの古株デザイナーでも、だいたい文章も書けたり、あるいはアーティストとしての側面も持っていたりすることのほうが多いように思う。
エンジニアやプログラマーだったら、プログラミングひとすじって傾向はわりとあるかもしれない。でもフリーランスのプログラマでたったひとつの言語しか書かない/書けないって人も逆に見たことない。あと、私はプログラミングもデザインもできる人だけれど、そういうのも今後確実に増える。
文章を書く人にしたって、私の周りで活躍しているライターのほとんどはカメラに明るい。カメラを持って取材に行く人、カメラマン兼ライターだ。文章も書くイラストレーター、イラストライターという人もいる。そりゃまあ文章しか扱わない人もきっといるのだろうけれど、かといって文章を書く以外には編集も校正も一切やらない!という人には、ついぞ会ったことがない。
Y氏はざっくり言うと「デザイナー」なんだけど、写真も撮るし映像も創る。図面書いてるのを見たこともあるな。なかなかひとことで「私は何です」と言いづらいと言っていた。私と同じだな〜。というか、そう思ってる制作系のフリーランスって、けっこういるんじゃない?
とはいえ、世間ではなにかと単一の肩書き、それも職業名を求められる。市役所や税務署の書類もそうだし、名刺にも何かしらの肩書きを書かなきゃ格好がつかない。そういうときには通りの良さそうな肩書きをなんとかひねり出して書いている。
せっかく考えた肩書きだけど、大阪の某IT系飲み会で同席した男に名刺を出したら、「ウェブエンジニア/イラストレーターって何?そんなんじゃ伝わらないよ。ランチェスター戦略的には肩書きとターゲットを絞ってうんぬんかんぬn」とか初対面の私に向かって説教をおっぱじめやがったことがある(※この件数年前から言ってる。ひつこいけどほんま腹立ってんて)。
この男は典型的な「セルフブランディング病」の患者さんですね。そんなこと言い出したら、全国のフリーランスをひとりずつ取っ捕まえて順番に説教しなくちゃいけなくなるよ?と思う。
◯◯業界という概念も正直、よくわからなくなってきた。いろいろ書いてると「その話はあなたの業界だけのものでしょ」という批判を受けることがあるけれど、一人の人間じたいが業界の垣根を越えていく世に生きちゃってる私なので、そう言われてもなんかピンとこない。
「世間よ、単一の肩書きを求めてくれるな」と言いたいわけではありません。なんか解決策を、というのも無理矢理すぎる。だけど、もう少しだけ知られればいいのにと思ってこの記事を書きました。制作系フリーランスの多くはいろんなことができるもんであり、単一の職業名で言い表そうとすると往々にして無理があるということを。
「多様性」もそうだけど、ひとりの人間が持つ「多面性」も認めたほうが、世の中楽しいと思うんだけどな。いかがでしょうか?