[ニューカレドニア一人旅日記:7]「私、泥棒になれる!」と確信
イルデパンに飛び立つ直前、空港で気づいた。
スーツケースのカギをなくしたことに。
チェックインの時刻が迫ってた。とりあえずスーツケースを預けた。
フライトまでの時間、ぐるぐると想像した。車屋さんだったら力になってくれるかしら?空港から宿までのあいだにそういうお店があったら寄ってもらうか。それか、誰かにお願いして工具を貸してもらって、カギを壊してこじ開けるか。もしどうしても開かなかったら…どうしよう?水着がないと、せっかくの海を泳げない。どこかで買えるかしら?
島に到着して、迎えの車を運転していたのは、子供を連れたおばさんだった。
とりあえず、おばさんに話しかけてみる。ちょっと私プロブレムを持っててね、バガージュがウブリエしなくてね、クレをペルデュしちゃって、って、必死のカタコトフラ語を繰り出したが、およそ理解してもらえない。そもそも、宿への道中には店も何もない。
そして英語も全く通じない。リゾート地ならどこだって英語が通じるという感覚は、ここでは忘れたほうがいい。メリディアンなら日本語だって通じるだろうけど、この界隈では、宿も商店も、ほぼフランス語しか通じない。
どうも、地元の主婦がアルバイト的な感じで送迎を担当していたらしい。民宿に近い質素な宿へ着いたら、おばさんは子供と一緒に帰っていった。
宿のスタッフが部屋へ案内してくれる。若い女の子。彼女にも再び「クレをペルデュうんぬん」をやってみた。今度はなんとか分かって貰えたようで、OK、あとでなんか工具でも持って来るよ、という返事を取り付けた。
これでひと安心とはいかないけど、せっかく来たんだし、海を見に行こう。時刻はちょうど夕暮れ直前。
ひたすらに長い真っ白な砂浜で、ターコイズブルーの海の上に夕日が落ちていくのを眺めた。問題をしばし忘れた。
宿へ戻る道で、何か落ちているのがふと目にとまった。
丈夫そうなハリガネだった。私は目が悪いのに、よく見つけたもんだと思う。
結論をいうと、これをスーツケースのカギ穴につっこんでごちゃごちゃやって、開けた。いわゆるピ○キングってやつ。開いたときは思わずひとりでやったぁ!と声を上げたけど、よく考えたら怖いもんだ。スーツケースのカギは、素人でも開けられてしまうんだ…。
なんか嬉しくて、もうあたりは暗かったけど、水着を引っぱり出して、宿のプールで泳いだ。
さっきのスタッフが「工具ちょっと待ってねー」と言ってきたので、泥棒みたいに開けたことを話したら、大笑いしていた。
笑い取れれば全て良し!