映画「オデッセイ/The Martian」レビュー – たぶん、いまこの世の中に必要な映画
久しぶりに日曜日を休めたので、めずらしく映画観てきました。「オデッセイ」。原題はThe Martianというようです。火星人?
予告でご存知の方も多いかと思いますが、火星に独り取り残された男がなんとかして生き抜くというお話です。ネタバレというほどの内容でもありませんが、避けたい人は以下は読まないでくださいませ。念のため。
ラジオのレビューで「元気の出る映画」って言われてたので気になったんです。SF映画にそんな論評がつくのは珍しいでしょう?
そして観終わってみて、なんかハリウッド映画っぽくないなあと思ったことには、登場人物がみんないい人。
例えば、NASA長官という人が登場します。こういう偉いさんは悪役が相場というものですが、この映画では、はじめは政治的なチャチャをいろいろと入れて来こそすれ、結局は計画を推進するために自分の地位を賭けてまで指揮を取ります。
マスコミだっていちいち色めき立ちつつも、まじめに心配している範囲の描写しかありませんし、びっくりしたのはあの国がヒーローのようにさっそうと助け船(※文字どおり)を出してくれること。しかもなんの裏もありません。現実世界でそんなことありえるのか!?という。
ともかく、人類の中には敵がいっさい出てきません。
あえて敵を挙げるとするならば、主人公にとっての敵は火星の環境、広大な宇宙、そして孤独と恐怖。もしかして火星の環境のきびしさを際立たせるためのお膳立てかもしれないけど、それ以上にこの設定は意味ありげです。
組織、国籍、人種、みな立場の違う人たちが結束して主人公の救出計画にあたり、その様子は中継されて、世界中の街角で人々が見守ります。科学によって人が困難を乗り越え、そして人類がひとつになるという、近未来の話なのに昔のSFが描いた理想郷のような手触りがしないでもありません。
そして、問題をひとつひとつ乗り越えていけば最後にはなんとかなる!というものすごくポジティブなメッセージが非常にわかりやすいかたちで置かれていました。
それで、これはたぶん、いまこの世の中に必要な映画なんだな、と感じました。世界はテロリズムや自然災害など問題を山ほど抱え、多くの人が未来を見失いそうないま、けれども、問題をひとつひとつ乗り越えろ!と言っているように聞こえます。そして、ディスコで踊れ!
またあらためて思うのには、映画でもって人を元気づけようとしている人がいることとは、当たり前のことではありながら、ほんとうに嬉しいこと、喜ばしいことです。と同時に、文化を作る仕事をしている端くれのものとして、だれかを励まそうとする視点を忘れたくないなと思いました。