フリーランスイラストレーターだけど、報酬の踏み倒しに遭ったので自力で解決した【交渉のポイントなど】
報酬未払いにあって困っているフリーランスクリエイターさん。調べてると「内容証明だ!」「少額訴訟だ!」って煽られまくってビビっちゃってませんか。でもまずは落ち着いて。
この記事では、私が報酬の踏み倒しに遭ったときどう解決したか、交渉のコツ、法的措置のことなどをお伝えします。
幸いそんな目に遭ったことのない人も、気をつけていても長いことやってれば一度や二度は遭遇すると思うから、まさかのときのために読んでみてね。
目次
踏み倒されそうになって自分で取り立て(笑)した話
かなり前の話で恐縮ですけれど。ある雑誌の記事の挿絵の仕事を引き受けたときのこと。いわゆる編集プロダクション、あまり大きな規模ではない会社との取引で、支払期日を過ぎてもお金が振り込まれませんでした。
まずはメールで担当者宛に「どうなってますか」と尋ねてみたら「請求書は届いてて弊社社長に通してあります、もう少しお待ちください」みたいな返信があった。
何日かして入金がないので、こんどは電話で担当者を呼び出したら、出社してませんと言われました。なんと翌日も。わ〜なにそれ、って思ったのでそのまた数日後に電話して、社長につないでもらった。
報酬が振り込まれてなくて、担当さんもつながらないんですけど、なんかありましたか?って尋ねたら、昨今弊社もなかなか厳しくて……みたいな感じのことをゴニョっと言ってました。
で、いつ払ってもらえますか?と聞いたら、来週の頭には、という返事を得たので、ひとまず電話を切りました。
翌週になっても振り込まれない。もう一回電話をかけて「いつ払ってもらえますか?」。これをその週のうちに3回繰り返すと、最後には社長も「すみません、勘弁して……」となり、ようやく払ってくれました。
まあ言うてみたらセルフで売掛金の取り立てをしてみました、って話なんですけど、これくらいなら誰でもできそうな気がしない?
交渉するポイント
これを知ってたからうまくいったのかな、と思ったポイント。
- 担当者の上長と交渉する。小さい会社なら社長。
- 「払うもん払って当然でしょ」「フリーランスだからってナメてんのか」みたいなことは言わない(怒りを買うだけで逆効果だって。元取立屋の人のブログで読んだ)。
- 基本は「いつ払ってもらえますか?」の繰り返し。とにかく日にちを言わせる。
- メールじゃなくて電話で伝える。
- 一日一回、2日おきくらいで何回か連続してコンタクトをとる。
最近の若い人とかクリエイター系の人ってなぜか電話を異様に避けるよね
某袋で、報酬を未払いされたフリーランスのデザイナーの女性が質問に「払ってくれないと困ります、ってメールしたら逆ギレメールが返信されてきました。どうしたらいいですか?」って書いてた。疑問でしかたなかった。
なんで電話せえへんの?
内気なのか何かわからないけど、電話をかけることを異様に避ける・怖がる人って最近多いよね。
電話はオワコン、とか言っているアホの子いますけど、そんなわけないでしょ。電話っていうか肉声で伝えることは、当たり前ですけど有効です。
こっちはほんまに腹立ってる、法的措置やりまっせ、と文字で書いても淡々としたもんです。ところが、声に出して伝えるととたんに本気の熱量が伝わるみたいなところがあるんです。こういう点、リアルに勝るものはなにもない。
まあ相手も人間なので、割とそんなので折れてきたりします。
記録を残す、ていうのはまた別の話ね、それは必要。電話の内容を後でメールで送るとかすればいいです。でも、なんでもかんでも文字だけで済ませようとするから、かんたんに解決するものも解決せえへんのと違いますか?って話。
報酬未払いにはほかのパターンもある。速攻SNS晒しとかまじ愚行やで
怒りに任せてTwitterでクライアント名晒したる!とかそういうのほんとやめて。相手に悪意がなくても関係一瞬で崩れるしあなた自身の価値も下げるし、いうたらあなたの同業全体も「あーこういうことする人たちね」みたいな目を向けられるから、愚かでしかない。
相手も困った事情に陥ってたり、単なるミスが原因で未払い(踏み倒しみたいに見える)に至るケースもあります。まずはこれらに該当しないか確認しよう。
パターン1 : 大元クライアントが払ってくれない
大元クライアント→制作会社→私、という流れの受発注関係だった場合。私が請求する先は制作会社なんだけど、大元クライアントの支払いが遅れているせいでお金の流れが止まってしまいました、というケース。
支払期日に入金がないから担当者に電話してどうした?とたずねてみたら、そういう事情で遅れてる、申し訳ない、という話だった。このケースでは、制作会社も困ってしまっているわけです。
とはいえ約束は約束だし、放置していたら回収不能になることもなくはない。私の場合は交渉の結果、制作会社が自腹を切って払ってくれることになりました。とてもいい会社。
パターン2 : クライアントが倒産した
請求書を発行してから支払期日までの間に相手の会社が倒産しちゃった。この場合はすぐに郵便でお知らせが届きます。私はなぜか2回経験してます。てへ
擬人化してかんたんにいうと、会社ちゃんが突然死んでしまって、裁判所が決めた管理人が遺品整理をはじめた、という状況です。こういう場合は、すばやく管理人に連絡をとって、会社ちゃんに貸し(=売掛金)があるから返してよね、と伝えなければなりません。それでも全額返ってくることは珍しいそうですけど。
愚かな私はそれを知らず、そのうち返してくれるのかな〜とボケーっと待っておりましたが、結局泣き寝入り状態となりました。大した金額じゃないけど。情けないな。
この時の担当者と数年おきに顔を合わせますが、今でもめっちゃペコペコされます。謎
パターン3 : 当方のミス(請求書にハンコを押してなかった)
超大手出版社との取引で。支払期日を過ぎ、いやいやこんな大企業が踏み倒しとかありえんやろ!と思いつつ確認したところ、私が送った請求書にハンコを押し忘れていたため、経理部内で【審議】のランプがついてたそうです。ええーそんなら請求書が届いた時点で指摘してよーと思いましたけど、1週間ほど待っていたら振り込んでもらえました。
イケてるフリーランス(笑)がもうハンコなんか捨てていいだろ!みたいなこと言ってるけど、真面目なフリーランスの皆さんはアホの言うことを鵜呑みにしないでくださいね。日本の大企業は今でもハンコ社会です。
クライアントの態度が本当にヤバい場合は、内容証明→少額訴訟
ここまでは比較的ユルい踏み倒し。ガチの報酬踏み倒しの場合、相手は意味不明な難癖をつけて払わなかったり、連絡を無視したりします。そういうときは次の手段に出ます。
内容証明
内容証明とは、郵便局のあるサービスの名前です。これは本当に郵便局に行くだけ。裁判所ではない。
まずあなたが文書を用意します。「未払いの報酬を払ってください、でないと訴えますよ」みたいなことをよきフォーマットに沿って書きます。それをあと2枚コピーして、一通は相手方へ書留で送り、もう一通は郵便局が、残りはあなたが持ちます。
この手続きにより、「その内容を確かにあなたが相手方へ送りましたよ」ということを、郵便局という第三者が証明してくれます。これが内容証明です。
これでなにが嬉しいかというと、あなたが報酬を踏み倒されそうなので改めて請求した、ということが客観的に明らかになるわけです。それと、あとで裁判したとき証拠にできる。
受け取った相手がどう出るかまではコントロールできないけど、心理的プレッシャーを与える効果は期待できます。相手方も裁判は回避したいのでこれで支払いに至った、という話はけっこうあります。
内容証明のやり方はこちら。
内容証明 – 日本郵便少額訴訟
内容証明を送ったけどそれでもまだ払わない場合、今度は裁判所へ行きます。金額が60万円以下なら少額訴訟ができます。ざっくりいうとコンパクトな民事裁判。
- 1回で審理から判決まで全部やる
- 手数料はだいたい数千円
- 弁護士はいなくていい。訴状や証拠は自分で用意可能(※なので前述の内容証明を先に送る。あとは仕事のやり取りのメールを印刷したものとか)
- あなたが勝ったら強制執行(差し押さえ)もできる
相手方がゴネて通常裁判へ移行する可能性もあって、そうなると今度は弁護士とかそれなりの費用も必要になってくるので、できたらここまでで終わらせたい。
詳しいことや訴状のフォーマットなどは裁判所のウェブサイトで。
裁判所|訴え(少額訴訟)を起こす方へ…【重要】そもそも、変なクライアントと付き合うな。身を守れ
例えばSNSで適当にクリエイターを探して声をかけているような人たちなんてトラブルの温床でしかない。おかしいクライアントは仕事が始まるまでのやり取りで必ずどこかおかしい。フリーランス=事業主ならばその時点で気づかなきゃいけないけど、気づけない人は仕事のやり方をちょっと見直したほうがいいかもしれないよ。
ギャラの話をする前に仕事を請けたりしてませんか。見積書とか発注書とか契約書とかちゃんと書いてますか。相場がわからないのでとか言われて足元見られてませんか。
だけどこの記事でも挙げたように、ミスや行き違いが原因の報酬未払いってのも実際ある。まともな企業とだけ取引していてもそれはゼロにはならないから、そんなときどう対処したらいいか知っておくことは大事ですよ。
報酬を取りっぱぐれることがないようにするためには「フリーナンス」のようなサービスもあるよ。口座を開いておくと報酬を先払いしてもらうことができて、しかも無料で口座を開くだけで仕事保険(フリーランスあんしん保障)がかかる。登録するだけしといて損はないです。
詳しくはこちらの記事にまとめたので読んでみてね。