[ニューカレドニア一人旅日記:3]マンタに遭遇、その価値は
初心者スキューバダイバーのあいだでは、「マンタを見たことがある?」という会話はアイサツみたいなもんである。
ものすごくでっかくて平べったい魚である。ヒレをゆったりと羽ばたかせるようにしながら泳ぐ姿がなんともいえず優雅で、かつ迫力がある。他に初心者のテンションを上げる効果のある生物には、ウミガメ・ナポレオンフィッシュ・クマノミ(いわゆる「ニモ」)などがあるが、これらは割と遭遇率が高い。対して、マンタは臆病なうえに、決まった場所にしか現れない。
だから、経験の少ないダイバーにとってマンタは特別な存在で、憧れの的なのだ。
私も、もちろんとても憧れていた。そろそろ初心者と名乗らなくてもいいかな、というくらいにはがんばった。パラオへも行った。パラオの海の豊かさはダイバーの間では有名で、マンタは港に出没することさえあるらしい。遭遇率80%と言われるポイントへも行った。
でも逢えなかった。こういう状態を、ダイバー同士の会話では「そりゃ、日頃の行いが悪いんだろ!」という。
で、今回、ようやく巡り会えた。ニューカレドニアの海で!確かに日頃の行いはあんまり良くないが、運なら向いてきてるのかもしれん!
短時間の遭遇だったけど、とても興奮した。マンタは深い水の底へゆっくりと滑るように去っていった。どこへ行くんだろう?この海での暮らしはどんなだろう?とても想像力を刺激される。そこが水族館で見るのとは違う。本当に嬉しかった!
さて、このダイビングに先立って、船上でご一緒した同年代の日本人夫妻に冒頭の質問を投げかけてみた。「マンタを見たことがある?」そしたら、奥さんが「このまえ見たよ!」と言った。
なんだか経験豊かそうな言いっぷりだったが、なんとこのご夫妻、二人ともダイビング経験は「10本」程度である。
消費した空気タンクの数を言っているのだけど、一日に潜れるのはだいたい3本分まで。ということは、ダイビング旅行に一度か二度出かけたことがあるだけなのだ。それでもうマンタに出会っているということは、かなり運のいい人たちかもしれない。さては、同乗した私も運を分けてもらったかな?
続いて、旦那さんは言う。「でもね、ウミガメは見たことがないんだよね」。
マンタが先って!逆やろ~?!