クリエイター系のかたに映画「テルマエ・ロマエ」を観てほしい理由。

テルマエ・ロマエ

映画『テルマエ・ロマエ』。マンガ『テルマエ・ロマエ』を土台にした、去年公開の映画です。

この手の一般娯楽映画なんて…と思ってナメていたのですが、たまたまDVDを観てみたら、意外にもクリエイターにとって大切なメッセージが入っているような気がしたのでした。

作品をご存知ないかたのためにかんたんに説明すると、古代ローマの浴場技師・ルシウスが風呂を介してタイムスリップをしてしまい、現代の日本の風呂文化に触れるというお話です。こだわりの強さがアダとなって得意先から干されていたルシウスは、”平たい顔族”(日本人のこと)の文明に衝撃とインスピレーションをあたえられ、そのおかげで皇帝に重用されるほどのテルマエ技師として活躍をかさねていきます。

原作でもこの設定は同じですが、こだわりをもった主人公が違う文明や人との出会いによって変わっていく、という筋書きじたいもいい意味で「クリエイターあるある」な感じですね。

文化で圧倒できれば、戦などいらない

皇帝のセリフ。「ローマはあまりにも広大だ。軍事力で抑えるには限界がある。文化で圧倒できれば、戦など必要ないのだ」。

戦、は現代に置き換えれば別のものかもしれないけど、もっと文化の力をクリエイター自身が信じたいものだな、と思います。

パクリは恥じることじゃない

自分の業績は”平たい顔族”の文化を模倣したにすぎない、自分などなんの力もない…と言って落ち込むルシウスに、ヒロインの真実が「何も恥じることなんてないんだよ!」という場面。

新しいアイデアのために悩みぬき、答えをさがしてあがいた果てに出会ったヒントなら、それは自分でつかんだのと同じことなのだから、胸を張ってよと言うのです。

温泉がだめならオンドル小屋を作ればいいじゃない

戦場で傷ついた兵士を癒すため、急いで温泉を掘らねば…!という局面に、なぜか古代ローマへタイムスリップしてきた父ちゃんと日本の温泉客たち。悩み、あせるルシウスに父ちゃんは「だったらオンドル小屋を作れば?」と提案します。

それだけではなく、楽しそうに小屋作りの手伝いをするオヤジたち。

「こいつらはなぜ手伝っているのだろう?自分を捨ててまで人を助けるとは…」と、和の精神あふれるオヤジたちの行動に衝撃をうける、古代ローマ人ルシウス。

悩み、答えを求める者には、ヒントが降りてくるし、だれかが手を貸してくれるのです。私もそうであればいいな。

 

最後に、その手柄で戦勝をみちびき、皇帝からの褒美を受け取る場面で、ルシウスがこう言います。

「私の力ではありません。皆の代りとして、ありがたく頂戴いたします」

インスピレーションやアイデアといった部分であれ、行動や人脈などいろんな意味で、クリエイターの仕事は一人ではなしえないことばかりなのです。忘れてしまいがちなことだけど、この映画からはそんなメッセージをもらったように思えました。

 

劇中、脈略なく登場するラッセル・ワトソンさんの「誰も寝てはならぬ」もなかなか味のある笑い、わたし好きです。
そして、クレジットによるとイタリアのチネチッタ・スタジオでも撮影がおこなわれたそう。あのフェリーニやヴィスコンティが愛した老舗スタジオですよね。なにげにすごいんだわ。

ついでに、アニメ版のチャットモンチーの主題歌もかなり好き。
お正月休みも終わってしまったタイミングではありますが、時間があれば観てみてください。

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