鳴尾バル ガイドマップイラスト メイキング
11月3日に開催される「第1回 鳴尾バル」のお手伝いとして、ガイドマップ用のフードイラストを提供しました。
この記事では「メイキング」と称して、水彩画フードイラストはどうやってできあがるのか?というあたりをご紹介したいと思います。
そもそもバルって何?
地域の飲食店がいっせいに行うイベントです。イベント当日、参加店舗は500〜1000円程度の”バルメニュー”を用意し、お客はあちこちのお店をはしごして楽しみます。一杯ずつはしごするスタイルのスペインのバル文化にならって「バルイベント」と呼ばれています。意外と知らなかったその街の「お気に入り」に巡り会えるかもしれないのが醍醐味で、地域の活性化につながるとして最近あちこちで開催されています。
ガイドマップにフードイラストを使用する、オファーの背景
「鳴尾バル」の参加店舗数は20。近隣のバルイベントと比較すると少ないですが、そのかわり他にはない特徴を打ち出していきたい、という思いが実行委員にはありました。
鳴尾村として歴史に名を残す地域でもあり、古くから営業しているお店や個性的な深みのあるお店が多いのです。”はしご”に必要なガイドマップの制作は重要なパーツです。ここにイラストを使用すれば歴史的な雰囲気ともマッチして、他とは違う雰囲気を出せそう!ということでお引き受けすることになりました。
それからもうひとつ、進行上の事情からイラストが有効という側面もありました。参加店舗すべてが営業の合間を縫ってバルメニューの写真を用意する、しかも短い制作期間に間に合うように…というのはなかなかに困難な作業だったりするのです。
写真でなくイラストを使うメリットは、例えばこんなものです。
- 現物の料理がなくてもなんとかなる。
- もちろん現物を見て描くのがベストですが、もしそれがなくても、携帯電話のスナップ写真や文章や取材から描き起こすことができます。
- 写真のとおりでなくてもクレームが発生しにくい
- 写真そのものだと、どうしてもお客は「このとおりのメニューが提供される」と捉えてしまいがち。イラストなら「※イメージです」という断り書きが必要ありません。「そもそも架空の存在」という心理的効果が働くので、実際に提供されたものと違ってもお客があまり気にしないのです。
- 統一感が出る。
- メニュー写真は各店舗がそれぞれに撮影したものを使うことが多いですが、もちろんプロが撮ったものではありませんから、それらに統一感を持たせるのは至難の業。
イラストなら当然、一人で描けば自然と雰囲気が合います。
素材&情報の準備
開催が決まったら、実行委員が各店舗から情報を取り寄せます。そこから私は、バルメニューとして提供する料理の内容と、かんたんな写真を頂きます。情報の集約やデータの共有はGoogleやDropboxを駆使して。
写真は、お店の方も忙しかったり、またあまり得意ではなかったりで、必ずしもきちんと撮影されたものに限りません。でも、スナップ写真でもあればずいぶんラクです。
写真を頂けないところは、電話で取材。
「どんな盛りつけを予定されてますか?」
「直径15cmくらいの皿に、付け合わせを盛って、あとは肉のスライスを……」
これで的確な答えを得られればOK。写真がなくても、8割くらいの確率で再現できます。
(的確な答えを得られない場合もありますが…そこはなんとか。)
もし、これでも情報が足りなければ、ネットで探します。「食べログ」や「ぐるなび」に掲載されている写真を見てみます。
見つかるのは素人が撮った写真ばかりですが、意外とこれが、お店の特徴を捉えていることが多いのです。誰でも自然と、印象に残った場面や料理にシャッターを切るんでしょうね。
使われている食器とか、料理の盛りつけ方は、お店の特徴が出るところなので、できれば押さえておきたいところです(そのまま描くかどうかは別として)。
実際にイラストを描いていきます
情報が集まったら、一気に描いていきます。エンピツでごくざっくりとアタリをつけて、あとはピグメントライナー(先の細いサインペン的なもの)で直接描き入れていきます。
紙はウォーターフォード水彩紙(ホワイト)というもの。坪量300gという分厚さで、木材パルプではなくコットンでできた非常に丈夫な紙です。
ポイントは、マンガの人がやる「完全下描き→ペン入れ」みたいな手順とは違うってこと。完全な下描きをしないことで、スケッチぽい雰囲気を出してます。そこが私のイラストの特徴です。
ペン描きが終わったら、着彩は固形水彩で。
ウインザー&ニュートン アーチストという銘柄をずっと使っています。
水彩は、少し塗ったら乾かして、また重ねて塗って…という手順を繰り返していきます。なので、まとめて進行することで効率よくさばけます。
Macで資料を見ながら、複数同時進行で着彩。
葉の色だけまとめて塗ったのが見えます。
今回は絵柄や構図についてはかなり自由にやらせて頂きました。原画ははがきより一回り大きいくらい。
わざと微妙に違いをつけてみたり、店内の風景を採用してみたり。
なんでも大きく描けばいいってもんでもなく、やはり印刷時のサイズやモノの本来の大きさを考慮するのがいいようです。
イラスト全20点でかかった時間はだいたい2.5日くらい。情報の到着を待ちながら、他の仕事もしながら…の進行なのでこんなもんかな?という感じですが、情報が一気にそろった状態ならもっと早かったと思います。
今回の仕事はデザインまではやらないので、これまで。原画を印刷屋さんに渡し、向こうのデザイナーさんがガイドマップに仕立ててくれます。この記事時点で、まだ印刷は始まっていません。私自身もできあがりをとっても楽しみにしています。
イラスト制作のご案内はこちら。
出版社様、デザイン事務所様等からのご依頼をお待ちしております。
「鳴尾バル」は11月3日開催!
今年は、「西宮あっちこっちバル月間」と称して、西宮市内の甲子園口・鳴尾・東口・阪神西宮・西宮北口の5地区が、10月末から5週連続でバルイベントを開催します!
私がイラストを担当した「鳴尾バル」はその2番目、11月3日(土)の開催です。
ぜひぜひお出かけくださいね。
情報は次のページから。
- 西宮バル 公認ウェブサイト…各バルの公式サイトへのリンクと、ガイドマップPDFがダウンロードできます。
あ、鳴尾バルでは、”幸福の青いトゥクトゥク”も走るよ!
どこを走るかはお楽しみ。乗れた人は幸せになれるという噂。